「八日目の蝉」の映画版とNHKドラマ版

2012年5月13日

先日、映画「八日目の蝉」を鑑賞しました。

映画自体は結構良かったのだけれど、ドラマ版と違う、ドラマ版の方が良かった、などという意見を幾つか見かけたので、ドラマ版も観てみました。
いろいろ違う点があって、それぞれでどちらが先かで作品の受け取り方が変わるのではと思ったので、簡単にまとめておきます。
原作は未読の人なので、どちらのが原作に近いのかまではわかりません。

  • キャスティングが違う
    これは当たり前なんですけど、希和子を演じるのが映画版は永作博美(以下敬称略)、ドラマ版は檀れいでした。檀れい版は薫を心配するあまり依存心が強すぎる印象がありましたが、永作博美版は演技も自然でうまい親子関係だったと思います。また、恵里菜(井上真央)の母親が、映画版は森口瑤子、ドラマ版は板谷由夏でしたが、物語の方向性が違うのもあるものの、森口瑤子の方が妄念に囚われた狂気を演じられていたように思います。浮気をしていた夫を出産で取り戻したと思っていたのに、幸せは全て希和子に持っていかれたという役柄です。
  • 物語の構成が違う
    乳児を誘拐して行くとこなくさまようところまでは概ね一緒なのだけど、ドラマ版には子供を亡くして孤独に暮らす倍賞千恵子や、育児ノイローゼで子供を殺してしまった過去を持つ高橋淳子、“エンゼルホームは子供を失った人が集まる場所”という説明があったりとか、女性の苦しみの部分にスポットが当てられています。逆に映画版は、幼少期を女性ばかりのエンゼルホームで過ごした影響で男性恐怖症になってしまった小池栄子を始め、過去の出来事のせいで、人生を歪められてしまった人々にスポットが当てられています。
    また、最も異なるのは希和子が文治こと岸谷五朗と惹かれ合うくだりがドラマ版にはあります。映画版には文治自体登場しません。
  • 物語の落とし所が違う
    希和子の過去の物語と、恵理菜の現在の物語が交差する構成はどちらも同じながら、映画版は過去を知ることで自己肯定できる恵理菜の物語だったのに対し(なので、裁判以後の希和子は登場しません)、ドラマ版は獄中や出所後の希和子、更には岡山で恵理菜と再開する(ネタバレ反転)シーンが描かれるなど、希和子の物語に終始しています。また、映画版の恵理菜は最初から産むことを決意しているのに対し、ドラマ版は産まない(堕ろす)つもりが、自身の過去に触れることで産もうと決意するようになるという点も主題を大きく変えていると思います。同時に映画版の恵理菜が千草と家族を築こうとしている点なども大きく異なる点です。このあたりの違いがキャスティングにも出ていて、映画版の恵理菜演じる井上真央はドラマ版の北乃きいより芯が強そうに見えます。

その他、写真館の店主の描き方が違うなど、いろいろ違うのですけど、映画版を先に観たからなのか、個人的には映画版の方が主題がはっきりしているのと、展開にメリハリがあるのとで、映画版がオススメです。特に終盤の写真館でのシーンは涙ナシには見られないのでは。

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